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卒業式。
自分の性格上、高校なんてなんの感慨もないと思ったけど、そうでもなかった。

それは勿論イベントの度に生徒会長に振り回されてきたからというのもあるし、
こいつのおかげで充実したというのもあるし・・・

今その生徒会長は答辞読んでる。

泣くかと思ったけど耐えたな。



あ・・・



まぁいいか

あの学園祭は正直大変だった。この生徒会長の派手好きな性格は本当にどうにかならないものか。

まぁそのおかげで折衝能力がついたような気もする。
多分、こいつがいなかったら波のない高校生活を送ってたんだろう。
勉強するだけして上の学校目指して。

こいつのおかげでいっぱい楽しめたと思う。
ありがたい。

しかし大学も一緒だったのは正直想定外だった・・・こいつとは出来ればつるまないようにしよう・・・・
自分のペースが崩れる!さすがに大学までは巻き込まれるのはいやだー!

とか考えてるうちに式は終了し、自分たち卒業生は外へ

退場の時、誰かと目が合った気がした



なんとなくわかる。誰かは。



卒業式の後はみんなで打ち上げの予定。

途中ピアノ室を覗いてみたがさすがに誰もいなかった・・・



さすがに帰っただろう



いるわけがない、いるわけが・・・



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3/14。



夕方、母に買い物を頼まれ近所のスーパーに来た。
ついでに本屋へ・・・
折角新生活も始まるし雑誌色々見てみようかなーと思った瞬間

棚の向こうにどこかで見たことのあるふわふわした頭を見つけた。
こいつこっちの家じゃないはずなのに・・・
なんかキョロキョロしてると思ったらため息をついたり。あいつにしては落ち着きない。
誰かを探してるのか・・・友達とはぐれたのかあいつは。あほだ。

気付かれないように回り込んでふわふわの頭をガッと掴む。



「よ!」

「!!!!!!!!」

「久しぶりだなー!こっちくるの珍しいな」
「あ・・・」
口をパクパクさせる緑。こいつはフナか!

「おひ、おひさしぶりです・・・!」
慌てて緑が言う
「他人行儀だなー!どうしたん?」
「いや、あの、先輩こそどうしたんですか!」
「あー母さんから頼まれて・・・」
「ちょっと時間いいですか!あ、でもおうちのことがあるなら・・・!んん・・」
「いやいいよ」
こいつは人の質問に答えないで慌てている・・・変な子だ

「行きたいお店があるんです・・・・!」

本屋を出てずんずん一人で進んでいく。俺も見失わないように後を追っていく



見失わないように。



見失わないように。





一生懸命緑は目的地へと急ぐ。
まるで俺のことは見えてないようだ

こいつらしい。

おっと思ったら店の前で俺のことを思い出したらしくキョロキョロしている。
「すみません、おれ・・・一人で突っ走って・・・」
顔が赤い。
「いいよいいよ。入ろう?」



カラン



ベルの音が店に響く。
日当たりのいい席へ進む。

席に着くとしばしの沈黙がふたりを包む。

しばらく目を泳がせて考えた後、意を決して緑が口を開いた。

「あの、柴田さん・・・・!」

「俺、離れるのいやです・・・」

「は?」



「いや、意味わかんないです・・・おれも・・・・」

「また一人でピアノ弾くのが淋しい・・・・」

「最近先輩いないじゃないですか・・・一人で練習してると柴田さんがそばで聞いてくれるのが凄く幸せだったなって思ったんです」





目を伏せて、俺とは目を合わせようとしない。



でも確実に伝えたい言葉を繋げていく。



( は な れ な い で )



すごく気持ちが痛い・・・・
この偏屈がこんな気持ちをさらけ出すのにどんなに勇気の要ったことだろう

愛おしさがきゅうんと心に降りかかる



まっすぐ緑を見つめてぶれないように、伝える



「俺はどこにも行かないし、ずっとそばにいるから」



涙目の緑が停止する





まるで全て理解したように。





そして平静を取り戻す。
ばつが悪かったみたいでまたあたふたし始めた。

「あっここのお店のケーキ食べたかったんですよ!!!」
フルーツの乗ったレアチーズケーキ。

甘くて酸っぱくて。きっと俺らには思い出の味になるんだろう。

目の前には幸せそうな緑の顔。げんきんな奴だ。



帰り際緑は「俺が奢るんです!」といって聞かなかった。
別に気にしないのに・・・

と思ってたら、今日はホワイトデー。

もしかしてこの前のお返しのつもりだったのかなと思うと

恥ずかしくて恥ずかしくて仕方がなかった。

さりげなくチョコを食べさせたつもりだったのにあっちは全部分かってたのか・・
うう・・・恥ずかしくて狂い死にしそうだ・・・





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ただ先輩の顔が見たくて先輩のいそうな所に行ってしまった。会えるなんて思ってなかった。

連絡先も知らなかったし、普通に考えたらおかしいと思う

会いたい会いたい会いたい会いたいと頭の中がいっぱいのとき、頭を触られてびっくりした。

俺の気持ちが引き寄せてしまったとか いや それはどうなんだろう!

そんなことを考えたら幸せすぎて布団の中で丸くなる。

やっと連絡先も教えてもらったし、また会えるんだと思うと線が繋がった様で嬉しい・・・



先輩は自宅から大学に行くみたいだし、会おうと思えばきっと会える。

今まで凄い不安で押しつぶされそうだったのが一気に楽になった。

メール作成画面を開いてはにやにや、閉じてはまた開いたり。
今日のお礼メール位してもおかしくないよな・・・!



今まではあなたの訪れを待つしかなかったけど、これで自分からもあなたの手を引っ張れる。

もっとそばにいたい

2009-04-08